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Bugeaterの虫食いノート(12)

2009/08/12 16:26

 

【虫の旬 秋(2)】

 

2)バッタ(成虫)(1

 

 「とともにやってきた

 誰だ 誰だ 悪をけ散らす 嵐の男

 仮面ライダー 正義のマスク」

 

 ごぞんじ「仮面ライダーの歌」である。男の子にとっての永遠のヒーロー、仮面ライダーのモチーフがトノサマバッタであることはよく知られている。仮面ライダーの顔はトノサマバッタそっくりだし、なによりあの「ライダージャンプ」はすごい。子供にはとても採ることのできないあこがれの虫なのだ。

 夏から秋にかけて成虫になるバッタ界の代表格であるトノサマバッタは、その名からして威風堂々として風格すらある。跳躍力はもとより飛翔力も群を抜いている。今回はこのトノサマバッタを食べる話である。

 毎秋10月中旬に催される「バッタ会」は我が昆虫料理研究会の恒例行事となっている。ネットを持った男女数十人が某河川敷に集まる。「いまから採集始めま〜す」のかけ声とともに、みんなが草むらに散ってネットを振りはじめる。毎回参加のベテランもいれば、初参加でこれまで虫取りなどしたことがない女の子もいる。最多40頭もとるベテランもいるが、たいていは56頭で、10頭も採れればがいいほうだ。トノサマバッタはとにかく眼がいい。ゆっくり近づいたつもりでも後脚がクリと動き、「トォー」とばかりジャンプして、翅を「ハタハタ」(バッタの語源はこの翅の音)と羽ばたかせ、数十メートル先の草むらへ飛んでいってしまう。獲物をねらう猫のように、背を低くして、じわりじわりと接近し、ネットの届く範囲にきたら、息を止めて一気に振り下ろすのが定石。経験を積んでコツをつかむしかない。

 バッタは眼がいいといった。彼らの雌雄のコミュニケーションは、鳴き声でも光でも匂いでもなく、形や色といった視覚に頼っている。「バッタつり」という採取方法がその証拠である。長さ80ミリぐらいの四角い棒きれ(ほぼ雌の長さ)を黒くぬり(体色が黒い群生相は集まる習性がある)、釣り糸を結び、バッタのそばにおく。すると雄のバッタが棒きれを雌と間違えて近づき、棒きれにとび乗ってしっかりつかまる。こうなるとつり上げても(恍惚状態のため?)離そうとしない。

 さあいよいよ採集したバッタを持ち寄って調理・試食である。取れたて新鮮だからどう調理しても美味いに決まっている。とりあえず一度殺菌のために熱湯に通す。体色が美味しそうな淡いピンク色に染まり、なんとも旨そうで、採集で腹を空かせたみんなの食欲をそそる。おなじキチン質を持つエビ・カニの仲間であることがわかる。熱湯から上げてよく水分をきる。素揚げでもカリカリして旨いし、衣をつけて天ぷらにするとサクサク感が加わってさらに旨い。トノサマバッタは大きいので、ほかのイナゴなど小型バッタよりも食べ応えも十分である。その分時間をやや長めに揚げることだ。そうすれば脚だってあまり苦にならない。こうして秋の一日、参加者は自然の恵みを満喫するのである。

 稲作の日本ではイナゴが害虫として駆除の対象になっている。一方でトノサマバッタは普通の虫という認識がほとんどで(子供たちにとっては採りたくても採れないあこがれの虫だが)毎年被害に見舞われるというものではない。ところが一度被害を被るとその規模は尋常ではない。『北海道蝗害報告書』によると、100年ほどまえ北海道の開拓地で大発生し、「バッタが飛び去ったあとには、緑を食べ尽くされた、赤っ茶けた土地だけが残った」。世界に眼を転じると、トノサマバッタは時として「飛蝗(ひこう)」化し甚大な被害を及ぼしている。

 トノサマバッタには「孤独相」と「群生相」があることが知られている。普通は体色が緑か茶褐色で体も丸みを帯びた孤独相だが、なんらかの理由で数が増えると体色が黒褐色になり翅も伸びて精悍な体躯となる。これが「飛蝗」といわれ、集団で緑を食べ尽くして大移動する。多摩動物公園の昆虫館へ行くと飼育箱の網にびっしり張り付くようにとまっている群生相のトノサマバッタを見ることができる。

 (バッタの項、次回に続く)

 

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Bugeaterの虫食いノート(11)

2009/07/27 19:16

 

【虫の旬 秋(1)】

 

 秋は収穫の季節である。虫も食べごろになるものが多い。おいしく食べることができる代表的な虫たちを挙げてみよう。

 

1)イナゴ(成虫)

2)バッタ(成虫)

3)スズメバチ(幼虫、さなぎ、成虫)

4)クリムシ

5)イモムシ

6)カマキリ

7コオロギ

8)クモ

 

以上がとりあえず頭に浮かんだオススメの食材である。クモは分類学上は昆虫ではないが、旬の虫として省けないので加えた。では順次見ていくことにしよう。

 

1)イナゴ(成虫)

 イナゴ(蝗)の語源には諸説あるが、「稲の子」(大言海)が有力。「稲田に寄生する子(コ)」の意。コは小動物を示す接尾辞で、桑子(クワコ)、蚕(カイコ)、鮎(アユコ)など。

 日本人とイナゴとの出会いは古く、稲作がはじまる縄文末期のさかのぼる。それゆえイナゴ食も縄文より続く馴染んだ味ということになる。イナゴは稲を加害する害虫であると同時に、見方を変えれば貴重なタンパク源として益虫でもあったのだ。

 イナゴにはコバネイナゴとハネナガイナゴの二種類がいる。現在佃煮などで出回っているのは分布域の広いコバネイナゴが主で、ハネナガイナゴは中部以南にかたより、個体数も昔に比べて減少している。

 かつて戦前から戦中にかけて、また地域によっては戦後にいたるまで、農山村の小学校では、年に一度は「イナゴ採り」が行事として行われたらしい。二学期に入ってすぐのころ、「明日はイナゴ採り!」と先生がいうと生徒はみんな沸き立ったという。授業がなくなって虫を追いかけ回すのは楽しかったのだ。生徒たちはめいめい袋に短い竹筒を差して縛った容器を持ち、田んぼに散ってイナゴを採った。たとえば食用イナゴの最大産地であった仙台平野では1シーズン100トンを越えるイナゴが集められていたという。学校に集められたイナゴを業者が買い付けて回り、佃煮業者に販売されていた。学校はこうして得た収入を足りない学用品の購入に当てていたようで、学校にとっては貴重な収入源だった。

 昆虫食を今に伝える長野にはイナゴ食の貴重な証言が残されている。

 

「秋には田のあぜにいなごがとび交う。手ぬぐいを縫った袋を腰に、いなごとりをする。夜に煮つけてつくだ煮にする。また、いろりのおきで焼いたいなごをおろし大根であえると、一味違ったおいしさがある。」(安曇平)

 

「秋になるといなごがとれる。稲刈りをはじめるとき、朝30分くらいいなごとりをしてから仕事にかかる。布袋へ入れて帰り、炒りなべで炒って足を除き、醤油と砂糖でからからに煮つける。何回かにわたって、一升か二升くらいを煮つけておき、ふたつきの入れものにとっておく。大切な滋養になる食べもので、ときどき出して食べる。」(伊那谷)

 

「稲の葉を食べて育ったいなごは、田んぼに霜の降りる前ころが脂がのっておいしく、「霜いなご」ともいわれる。稲刈りから脱穀のころ、さらしの袋を腰にぶら下げていき、田仕事の合い間に四つ五つととる。

 お湯に通してよく洗い、飛び足と羽をもぎとって甘からく煮つける。砂糖、醤油は目分量である。かめにとっておいて、冬中のおかずにする。

 また、お湯でゆでてから、からからに干したものをすり鉢ですりつぶし、いなご味噌にして食べる。田植えどきのなめ味噌になったり、産婦によいといって味噌汁に入れて食べさせる。

 いなごの煮かたにも家々の秘伝があり、色も味も歯ざわりも微妙に違っていて、自慢の種になる。」(佐久平)

 

 このようにイナゴは文字通り日本人の伝統食である。佃煮が主な調理法だが、天ぷらや空揚げやフライにしてもおいしい。また数日天日干しすれば常温で保存できる。栄養的にみても、ある分析結果によれば、タンパク質が乾燥重量の68.1パーセントもあるのに対し、脂肪は4パーセントと少ない。とてもヘルシーな食材といえる。一般には粉にしてパン、うどん、ハンバーグなどに混ぜ込むと抵抗が少ないのではないか。

 イナゴは日本人の季節感とも密接にかかわってきた。それは俳句の秋の季語であることからもよく分かる。以下にイナゴを季語に詠んだ俳句を掲げる。

 

鴫網の目にもたまらぬ螽かな  史邦

道ばたや蝗つるみす穂のなびき  暁台

とび上る螽の腹に入日かな  高浜虚子

螽焼く燠のほこほこと夕間暮  飯田蛇笏

夕焼けて火花の如く飛ぶ蝗  鈴木花蓑

一字や蝗のとべる音ばかり  水原秋櫻子

蝗皆居向をかふる家路かな  阿波野青畝

石橋の蝗や野川とどまらず  山口誓子

みちのくの秋はみじかし跳ぶ蝗  福田蓼汀

蝗熬る炉のかぐはしき門過ぎぬ  西島麦南

ここまでの競輪の鉦蝗の昼  鈴木六林男

ひとり夜の煙草火で焼く蝗かな  赤尾兜子

蝗とぶやたんぼの中の湯葉料理  高桑義生

糸にさす蝗の顔のみなおなじ  大竹きみ江

 

 

参考文献

吉田金彦編著(2001年):『語源辞典 動物編』、東京堂出版。

篠原圭三郎(1998年):『虫たちを探しに』、日本放送出版協会。

向山雅重他編(1986年):『聞き書 長野の食事』、農文協。

篠永哲、林晃史(1996年):『虫の味』、八坂書房。

三橋淳(1997年):『虫を食べる人びと』、平凡社。

水原秋櫻子、加藤楸邨、山本健吉監修(1998年):『日本たべもの歳時記』、講談社。

 

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Bugeaterの虫食いノート(10)

2009/07/14 20:20

 

【虫の旬 夏(番外・タガメ)】

 

 前回の最後でカメムシに関連して昆虫の「匂い」について少し触れた。「味」とともに「匂い」の要素も美味しさに深く関わってくる。焼いたり煮たりした時の鼻孔をくすぐる香ばしい匂いは食欲をそそる。日本人にとってカメムシの「匂い」は食欲を減退させるが、世界の一部ではこれが食欲をそそるプラス評価となる地域もある。食文化の違いの顕著な例といえようか。

 旬という観点からすれば、国内でほとんどみかけないタガメは対象外かもしれない。しかも通常我々が食用とするのは、タイ産の近縁種タイワンタガメで、別名メンダーで知られている。にもかかわらずあえてここで紹介したいのは、その類例のない個性的な香りと味である。タガメはカメムシの仲間だが、多くの日本人に受け入れられる味と香りを持っている。

 タガメは田龜とも水爬虫とも書く。カメムシ目コオイムシ科の水生昆虫である。「高野聖」「かっぱむし」など異名を持つ大型昆虫で、名前の由来は「田にすむカメムシ」の意。水生昆虫の王者として君臨するも、日本では農薬使用など環境変化で激減し、絶滅が危惧されている。幼虫の頃から成虫になるまで一貫して、魚や蛙、昆虫などを捕まえて体液を吸う。雄が卵をふ化するまで世話することで有名。

 タイ北部からラオス、ミャンマーを結ぶ山岳地帯は、世界でも有数のケシ供給地であることから〈黄金の三角地帯〉と呼ばれている。それをさらに中国雲南省まで北に広げたこの一帯は〈食虫の三角地帯〉と呼ばれ、昆虫食が非常に盛んな地域として知られる。なかでもタガメはタイ王族にも好まれた由緒ある食材で、この地域を〈タガメ食文化圏〉と呼ぶ人もいるほど、普遍的に愛されてきた。

 なぜ、こんなにもタガメが珍重されたのか。それは食してもなお口のなかで広がる、心地よい香りに秘密がある。「タガメの雄は後胸に一対の嗅線をもち、バナナ臭を発する」と昆虫図鑑にある。そのためタイでは、香りのある雄のほうが雌の5倍ちかくも高い値段で売られている。この気品ある爽やかな香りの正体は、その嗅線に含まれる「アミルの吉草酸塩(カルボン酸エステル)」だといわれている。この成分は果実やハーブなどにも含まれているもので、リラックス効果や導眠作用がある天然成分として、欧米では古くから不眠症やストレス緩和の特効薬として重宝されている。

 ならば日本のタガメの「匂い」はどうか。この点については推測するしかない。日本でもかつてタガメが食用とされた記録はある。だが主に食べられたのは卵だったという。タガメ自体を食べる習慣がそれほど定着していなかったようである。したがってタイワンタガメほどの香り成分は含まれていないのではないか。日本でもタガメが増えて試食できるような自然環境がよみがえることを願うしかない。

 具体的なタイワンタガメの食べ方について触れておく。本場のタイなどでは屋台やショッピングセンターなどで、揚げて売られていたり、あるいは炒め物の味付けに使われていたりする。チリペッパーにタガメ風味を加えてペースト状にした瓶詰も販売されている。タガメの成分は心身をリラックスさせ、夏ばてを防ぐ効果がある。暑い国タイで好まれるのも道理である。これを日本風にアレンジして、そうめんの薬味にしたらどうか。ということで考えたのが以下のレシピである。

 

【レシピ】(3人分)

●材料

タガメ(オス) 3

そうめん 300g

削り節

ゆず 少々

しょうが 少々

みりん 12カップ

しょうゆ 12カップ

水 2カップ

 

●作り方

1 みりんを沸騰させ、しょうゆ、水、削り節を加える。

  再度沸騰したら火をとめて濾し、2時間ほどおく。

2 タガメは約1時間塩抜きし、5分ほど蒸す。

3 羽を開いて外皮にハサミで切りこみを入れ、羽を閉じておく。

  お好みでおなかにゆずかしょうがをいれ、香りつけする。

4 湯を沸騰させた鍋にそうめんを入れ、強火で2分ほどゆでる。

  ざるにあけ、流水で冷まし、もみ洗いする。

5 タガメは羽を開いて外皮をめくり、中身を取り出す。

  それをつゆに入れ、薬味としていただく。

  

 

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Bugeaterの虫食いノート(9)

2009/07/06 12:05

 

【虫の旬 夏(3)】

 

3)ショウリョウバッタ、オンブバッタの成虫

 この二種はバッタのなかでもよく目に付くのではないか。昆虫食入門者にはおすすめである。両者とも雌雄で体長が大きく異なり、雌は雄の倍近く大きい。

 オンブバッタは雄25mm、雌42mmぐらいが標準。近所の畑まわりの草地などでも見つかる。特徴は雌が雄をいつもオンブしていることで、オンブバッタの所以である。「雌にお任せの人生は楽でいいのでは」という御仁もおられるが、こうべったりだと浮気もできないし、一生奥さん任せというのもどうかなと私は思う。食材としてみると二頭同時にゲットできるのでうれしい。ということは天敵にとっても同様なのではないか。たとえ同時に食べられるリスクを犯してでも、オンブバッタ雄は自分の遺伝子を残すための究極の技を選択したとも考えられる。

 ショウリョウバッタは日本最大級のバッタである。雄4552mm、雌7582mmぐらいが標準。河川敷の草地に多い。8月の精霊(しょうりょう)祭のころ現れることから名付けられたという説が有力。雄は飛ぶとき翅を打ち合わせ「キチキチ」という音を出すのでキチキチバッタと呼ばれる。また後脚を持つと脚を折り曲げ体を前後させる動作を繰り返すためコメツキバッタとも。

 調理法は素揚げが一番である。昆虫全般に言えることだが揚げすぎに注意したい。170度の油でオンブが1分、ショウリョウが2分ぐらいが目安か。油の泡が細かくなり音が小さくなれば火が通った合図だ。家庭だと油の量も少量なのですぐ温度が上がってしまう。上がりすぎたと感じたらいったん火を止めて様子をみよう。ショウリョウバッタは大型だがカリカリに揚げれば翅や脚は思ったほど気にならない。人にもよるので気になるという場合は前もって外しておく。両者とも揚げると淡いピンクに染まり、食欲をいっそうそそられる。身近にたくさんいて採集が容易なこと、食べてクセがなくエビと同じような食感であることなど、虫を食べてみたい人にまずはおすすめのメニューである。

 

4)集光性昆虫類(灯火採集)

 つぎに「飛んで火に入る夏の虫」を食べてみよう。夜行性昆虫の多くは明かりに集まる。灯火採集はその習性を利用して昆虫を採る方法で、昆虫採集技術として確立している。専門書を読むと必要な器具や方法が細かく書かれている。ガ類が主だが、他に甲虫類のカブトムシ、クワガタムシ、コガネムシ、カミキリムシ、ガムシなどや、ヘビトンボ、カゲロウなども採れる。風がなく月もでていない夜がねらい目である。好条件に恵まれると一晩で数千匹も採集できる(ただしここには食用に不向きな微少種も含む)そうだが、本格的だと費用もかさむので、気軽にできる方法を述べる。

 夏どこかへキャンプに出かけたら、そのついでに楽しむことができる。できるだけ周辺の外に開けた区画を申し込み、電源があることも確認しておく。蛍光灯(あればブラックライトも併用)、白いシーツ、園芸用支柱23m56本(あるいは現地で適当な枝を探す)、紐などを持参したい。設置に当たっては他の泊まり客に迷惑にならないよう心がける。

 食べる前に注意点をひとつ。カンタリジンという毒を有するマメハンミョウやアオカミキリモドキも飛来するかもしれない。これらが集団でやってくることはないにせよ、食べないにこしたことはない。まえもって図鑑をみて確認しておこう。とくにアオカミキリモドキは集光性が強いとされている。触っただけでも体液でかぶれたりするので注意したい。

 食べ方の基本は、シーツにとまった昆虫を次々熱した油に放り込んで食べる、というシンプルかつプリミティブな方法である。夜闇にまぎれて獲物が来るのをじっと待つのはまるで先祖返りした気分で、全身の細胞が躍る。基本的に塩コショウで食べる。

 ガ類は丸ごと食べられる。鱗粉は大丈夫かという声をよく聞くが、毒でないことはもちろん、揚げてしまえばまったく粉っぽさなどない。お腹のふくれた子持ちガに出会えれば幸運である。微少だがプチプチした卵の歯触りがうれしい。

 飼育に興味のある人は、ヤママユガの雌が来たら食べずに持ち帰るといい。たいてい交尾済みなので有精卵を産む。適度な湿り気を与えて保管しておくと、うまくすれば翌春孵化する。コナラやクヌギの葉を与えるとどんどん太り、淡黄緑色の美しい繭を作るのが観察できる。やがて大型の成虫が羽化する。このヤママユガのサナギが美味い。普通のカイコのサナギより大きく、サクサン(中国産のヤママユガ科)より小さい。網で焼いて皮をむくと香ばしくほっくりした食感が楽しめるし、茹でると中身はトロトロした豆腐状で玉子の白身の味に似ている。たぶん新鮮だからこそ味わえる美味さなのであろう。

 甲虫類も揚げるとたいがい丸ごとポリポリ食べられる。ただ大型のカブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシなどは、開いて旨味のある胸肉を食べる。

 もっと虫の味を味わいたい人には蒸し焼きがおすすめ。大型甲虫はアルミホイルがあったら包んで蒸し焼きにしてみよう。ちょっと醤油を回していただく。赤身の胸肉は噛み締めるとサラミのような旨味がにじみ出る。

 カメムシ類も飛来する。カメムシはやはり独特の臭気がある。日本人の多くが嫌う臭いだ。しかし東南アジアの一部(とりわけラオス)では香草とともに好んで調理に使われる地域もあるらしい。東南アジアで広く食べられているタガメ(筆者は本種の香りと味を「バナナの香り、洋ナシの味」と例えて説明している)も、よく考えればカメムシの仲間である。それと分かれば納得がいくかもしれない。食文化の違いを知るためにも、一食の価値はありそうである。

 

参考文献

奥本大三郎、岡田朝雄(1991):『楽しい昆虫採集』、草思社。

野中健一(2007年):『虫食む人々の暮らし』、日本放送出版協会。

 

 

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Bugeaterの虫食いノート(8)

2009/06/30 12:27

 

【虫の旬 夏(2)】

 

2)カブトムシ、カミキリムシ、クワガタムシ、カナブン、ハナムグリ、ゾウムシなど甲虫類の成虫

 甲虫類は昆虫のなかでもっとも種類が多く、日本だけでも約7000種といわれている。図鑑に登場する主役たちだけでも1000種をこえる。分類学上は鞘翅目に属している。その名のとおり体全体が非常に硬いキチン質で覆われている。日夜全身「よろい」を身につけて暮らしているようなものである。柔軟性は失われるが、敵に襲われても生き延びる確率はたかく、繁栄を謳歌している理由もうなずける。爬虫類のカメなどもこの戦略で悠久の時を生き延びている。

 ではさっそく身近で採取できる有名どころの甲虫を食べてみよう。

 

a)カブトムシ

 本種は子供たちの人気ナンバーワン昆虫である。クヌギやコナラなど樹液が出る木に飛来する。比較的採集は容易である。本種は大型で硬いので丸ごとは食べられない。通常虫体を開いて胸肉を食べる。アルミホイルに包んで蒸し焼きにするのが一番カブトムシの旨味を味わうことができる。昆虫一般に胸部に翅や脚など運動機能がまとまっている。この筋肉が可食部位である。塩コショウでいただく。幼虫はそのプリプリした外見に似ず腐葉土臭が強くて食べにくいのだが(サナギ段階でも同様の臭みは強い)、成虫になると樹液を餌にしているせいか腐葉土の臭みは微塵もないのが不思議だ。木に上り空を飛ぶために胸部の翅や脚の筋肉が発達し、運動機能に関与する伝達物質であるグルタミン酸が増えるのが旨味の要因なのではないかと推測できる。

 早朝の雑木林では、木の根元に殻が破られ中身が食べられたカブトムシがたくさん転がっていて、まだ角や脚が動いていたりする。カラスは美味いものをよく知っているのだ。

 

b)カミキリムシ

 本種の幼虫はテッポウムシあるいはゴトウムシと称され、昆虫食界では美味い虫ナンバーワンとされてきた。成虫もカブトムシと同様ホイル焼きで美味しく食べることができる。筆者の場合は、家の近くに野生化したクワの木があり、夏になるとこの木につくクワカミキリを採取して食べるのを楽しみにしている。

 かつて長野県の伊那地方の山間部で食べられていた変わった方法を本多勝一氏が紹介しているので要約したい。氏の場合はシロスジカミキリである。山で一定量を採取してもちかえり、頭部をちぎり、中身がでないようにまっすぐ囲炉裏の灰にさす。しばらくして香ばしいにおいがしてきたら、灰から抜き取り、硬い翅をむしってサジ代わりにして、クリーム状の中身をすくって食べるというもの。

 シロスジカミキリは体長5センチの大型種である。新鮮なシロスジの半熟はきっと美味いにちがいない。クワはいくぶん小さく、しかも囲炉裏のようにじわじわ蒸す方法がわからない。今年の夏こそはなんとか半熟カミキリを味わいたいものである。

 

c)クワガタムシ

 本種は大人達にも人気の昆虫である。成虫の調理法や味はカブトムシやカミキリムシとほぼ同じと考えていいだろう。ただクワガタムシは種類が豊富で、希少価値もあり、食べるのがもったいない気分にさせられる。筆者もクワガタムシは試食経験が少ない。

 

d)カナブン、ハナムグリ

 カブトムシと同じコガネムシ科に属する。カブトムシやクワガタムシに比べて量が取れることもあり人気度は落ちる。20mm30mmと小型なので食べ方が異なる。これらは開いても筋肉は微量で食べにくいので、揚げて食べることになる。小さいのでチキン質の外皮も薄く、まるごとカリカリ食べることができる。

 

e)ゾウムシ

 ゾウのような長い口吻があることからこの名がある。栗につくクリシギゾウムシは害虫としてよく知られている。クリシギゾウムシの幼虫は歯触りの良さとほのかな甘味で好評だが、成虫の美味しさはあまり知られていない。あのごつごつした外骨格がそうとう硬そうに見えるためだろう。しかしもともと体が小さいので、揚げれば殻もカリカリ食べられるものが多く、食感は悪くない。

 

 最後にキチンについて一言。これは甲殻類のエビやカニの殻でよく知られている。昆虫類や甲殻類をふくむ節足動物の皮膚は硬いキチン質でおおわれ、外界から身を守るバリアーとなっている。さてこのキチンを食べるとどうなるか。キチン自体を消化する酵素をヒトは持っていないが、食物繊維と同等の働きがあるといわれている。食物繊維は脂肪やコレステロールの吸収を阻害し、これらの血中濃度を低下させる効果がある健康食品としてよく知られている。昆虫が体にいい理由の一つがここにもある。

 

参考文献

本多勝一:「こんなものを食べてきた」、週刊金曜日、20001117日。

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Bugeaterの虫食いノート(7)

2009/06/23 21:42

 

【虫の旬 夏(1)】

 

 いよいよ夏である。夏から秋にかけて虫たちは幼虫から成虫へと成長し、繁殖シーズンをむかえる。夏の代表的な食べられる虫たちを挙げてみよう。

 

1)セミ成虫と幼虫

2)カブトムシ、カナブン、ハナムグリ、カミキリムシなど甲虫類の成虫

3)ショウリョウバッタ、オンブバッタの成虫

4)集光性昆虫類(灯火採集)

 

 それでは順次見ていくことにする。

1)セミ成虫と幼虫

 セミは夏の風物詩といわれ、夏を代表する昆虫である。セミは採取しやすい虫の代表である。子供のころセミ取りをした覚えのある人は多い。だが食べたという人はさすがに少ないだろう。昆虫食のメッカ信州生まれの筆者の場合も幼少のころ食べた記憶はない。ただ身近な存在だったせいか古来よりセミは世界各地で食用とされてきた。

 アリストテレスとファーブルのセミ食に関する逸話はよく知られている。アリストテレスは羽化直前の幼虫を「セミはあじわいきわめて甘美なり」と書き残した。これを読んだファーブルは、幼虫4頭を採取し、オリーブ油45滴、塩ひとつまみ、タマネギ少々で調理して家族で試食した。感想は、食べられないことはないが、硬くて、パサパサで、とても人にはすすめられない、というものだった。筆者はアリストテレスを支持する。ファーブルの試食したセミはなぜまずかったか。いくつかの推測はできる。

 第一に、どんな種類のセミを食べたか分からない。種類によって味に違いがあるのではないか。南仏にどんなセミが生息しているか。おわかりの方がおられたらご教示ねがいたい。

 第二に、ファーブル昆虫記に書かれている材料から判断すると油で炒めたものであろう。「硬くてパサパサ」になったのは油が少量でしかも炒めすぎたからではないか。

 第三に、ファーブルは焼けつくような太陽が出てから採集している。そのため家族で2時間探して4頭しか採集できなかった。セミの羽化は日没から夜半にかけて行われるのが普通だ。天敵に襲われない夜間に十分羽をのばしておかなければならない。ファーブルが採集したセミは健康な個体ではなく、発育不全だったのではないか。

 セミは日本でも各地で食べられてきたようだ。長野や沖縄でその報告がある。セミは農家にとって害虫である。果樹とりわけリンゴやナシの樹液を好んで吸汁する。リンゴ栽培がさかんな長野県では、主にアブラゼミの吸汁による木の衰弱が問題となった。成虫は幹から樹液を吸い、産卵して死ぬが、孵化した幼虫は根元の土中にもぐり、46年の間木の根の汁を吸って木を弱らせる。そこで園芸試験場でセミ幼虫の捕獲器が考案され、リンゴ農家に配られた。捕獲された大量の幼虫はどうするか。そこはさすが長野県である。イナゴのように食用にならないか、と考えたらしい。加工して缶詰にして販売したら一石二鳥ではないか。そこで考案されたのが「信州セミのからあげ」という名のセミ缶だった。だがこの缶詰は時代の趨勢からいつのまにか姿を消したようだ。筆者も実物を知らない。

(成虫の食べ方)

 素揚げがいちばん食べやすい調理法である。捕ってきたセミを熱湯で殺し殺菌する。水気をよくふき取り、中温で揚げる。揚げすぎると焦げ臭くなる。塩コショウでいただく。サクサクと丸ごと食べられる。羽と脚を取ると食べやすい。ただ羽のパリパリした歯触りがいいという人もいる。好みである。アブラゼミはなぜか揚げ油が黒くなりやすい。噛み締めるとサラミのような旨味がジワリをにじみ出る。発達した飛翔筋(胸肉)が旨味の元ではないか。割ってみると胸部にごくわずかだが赤身の部分が確認できる。

(幼虫の食べ方)

 幼虫は応用範囲が広い。食感はエビによく似ているので、エビ料理をそのまま応用できる。昆虫としてはめずらしく身が詰まっていてシコシコした肉の歯ごたえを楽しめる。天ぷらやフライにしても美味しいし、セミチリならぬエビチリにしてもいい。

 変わり種は燻製である。研究会でも好評を得た。料理は香りや風味の要素も大きいことが実感させられる。

 1 だしつゆ+酒で10分茹でる。

 2 ざるに上げて1時間ほどさます。

 3 燻製15

 4 火を止めて5

 家庭用の簡易燻製器でおいしいセミの燻製ができる。だしは使わずに茹でて塩をふって1時間おいてもいい。燻煙時間は燻製器によって若干異なる。どこか植物的なナッツ系豆系の旨味と燻製の香りがミックスして鼻孔をくすぐる逸品である。

 最後に、クマゼミは関西以南では一般的だが、関東地方ではあまり目にしない。北限は小田原とされているが、温暖化で次第に北上しているようだ。筆者がまだ口にしていないセミである。アブラゼミなどより一回りおおきくて、食べ応えもありそうだ。西日本方面の方の試食報告を期待している。

 

参考文献

三橋淳(1997年):『虫を食べる人びと』、平凡社。

 

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Bugeaterの虫食いノート(6)

2009/06/15 11:01

 

【虫の旬 春】

 

 生き物にとって春の訪れは待ち遠しい。そんな春のきざしをどこで感じるかは生き物さまざま人さまざまであろう。筆者の場合はキチョウの初見であろうか。関東地方ではそれはだいたい3月半ばごろやってくる。秋に羽化したキチョウは成虫越冬する。毎朝通勤で多摩川の土手を歩く。3月になると落ち着かず、左右の草むらに視線を走らせることになる。そしてその日は今年もやってくる。キチョウだ。まだ弱々しくヒラリヒラリと、だが確実にやってくる春のプレリュードである。

 桜の開花とともに虫たちも活発に動き回るようになる。ただ本格的な虫食いシーズンの到来はやはり5月になってからである。このころの旬の虫はなんだろう。

 

1)クビキリギス、ツチイナゴ成虫

2)オオカマキリ1齢幼虫

3)キリギリス、バッタ、コオロギ幼虫

 

以上が比較的採集が容易な虫たちである。順にみていこう。

 

1)クビキリギス、ツチイナゴ成虫

 クビキリギスはキリギリス科に属する。秋に成虫になり翌年初夏まで生きる。緑色型と褐色型がある。大あごが血のように赤く、噛みつく力も強い。春のぽかぽか陽気に草地などかき分けて歩くと飛び出してくる。手で簡単に採取出来る。血のしたたる生肉を食ったような赤い大顎は見た目で怖いし、事実噛まれるとけっこう痛いので注意したい。

 ツチイナゴはイナゴ科に属する。クズの葉を好む。枯れ草の下などで越冬する。複眼の下にのびた黒い線模様がアイラインのようで、切れ長に見えたり涙目に見えたりする。背中に白い線があるのも特徴。体長56cm

 南西諸島以南に分布する近縁種タイワンツチイナゴは最大8cmにもなる大型種で、タイなどではよく食べられている。

 (食べ方)

 クビキリギス、ツチイナゴも素揚げで塩コショウがもっとも食べやすい。取れたてを夕飯に揚げてつまみにして一杯というのが一番おつな食べ方であろうか。クビキリギスの雌には長い産卵管があって見た目痛そうだが、揚げると全く問題なくサクサクいただける。ツチイナゴも同様である。やはり揚げて塩コショウが手っ取り早い。大きくてもイナゴと名が付いているので心理的にもハードルが低い。タイで揚げてパック詰めしたものが輸入されているが、トノサマバッタより大きく、実に食べ甲斐がある。

 

2)オオカマキリ1齢幼虫

 卵嚢から生まれたてのベビーを集めて食用にする。これには前もって卵嚢を集めておく必要がある。集める時期は1月か2月ごろがいいだろう。葉が枯れて卵嚢が目立つので取りやすい。河原の土手沿いに葉を落とした小灌木の小枝やイネ科の葦などの茎を見ていくと、卵嚢を見つけることができる。比較的まとまって産み付けられていることが多いので、一個見つけたら周辺も探してみよう。

 採取した卵嚢はまとめておいて、4月半ばごろになったら、割り箸で固定し1個ずつチャック付きビニール袋などに上下を間違えずにいれ、ストローを差し込んでチャックをしめる。ストローは空気穴だ。少しだったらこれを飼育ケースなどの中につるしておく。筆者の場合は自室の壁に画鋲でとめている。孵化するのを見計らってストローを抜き取り、チャックを完全に閉じる。くれぐれも茶の間などにおかないことだ。午前中に孵化することが多いので、留守中に孵化したら部屋中にカマキリベビーが拡散することになる。相棒が虫嫌いだったら騒動になりかねない。

 筆者の場合冬季に2030個ぐらいを採取しておく。カツオブシムシに寄生されている卵嚢も多い。経験上23割は孵化しない。孵化したらまとめて冷凍保存する。これだけあると試食会などでだいたい一年分使える量になる。

(食べ方)

 まず油通しする。網じゃくしなどにいれ、中温で泡がなくなり音が落ちついたら上げる。1020秒ほどが目安。くれぐれも焦がさないこと。油を切ってよくほぐし、削り節をふりかけて混ぜる。豆腐にのせていただく。ふりかけとして食べるのが一番だろう。いろいろバリエーションがありそうだ。

 

3)キリギリス、バッタ、コオロギ幼虫

 キリギリス、バッタ、コオロギ類の幼虫など、いよいよ春のニンフたちの登場である。ニンフ(nymph)とはギリシャ神話で自然界の精霊いわゆる妖精のことで、美しい少女の形容である。また不完全変態をする昆虫の幼虫をいい、若虫とも呼ばれる。キリギリス、バッタ、コオロギ類の幼虫は文字通り軽やかに新緑の草地を跳び回る春の妖精たちである。彼らをいただくことは春の息吹を体内に取り込むことなのだ。昆虫食にとって実に象徴的な行為といえる。

 5月になると体長1020mmあまりに成長する。昆虫料理研究会では毎年5月下旬に「若虫会」と称して屋外での試食会を開いている。われわれ虫食い仲間にとっては待望のシーズン到来を実感できる催しである。草地をかき分け飛び出してくる虫たちを採取、その場で調理して食べる。

(食べ方)

 アウトドアなので素揚げ、天ぷら、かき揚げが簡単で美味しく、かつ衛生的でもある。かき揚げには野草を加えるのも趣があっていい。どの虫も幼虫なのでやわらかい。バッタは揚げると赤く染まり食感は小エビとほとんど変わらない。

 

 

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Bugeaterの虫食いノート(5)

2009/06/01 22:37

 

【虫の旬 冬】

 

食べ物の「旬」とはなにか。「よくとれて味のもっともよい時」(『広辞苑』)とある。いまは旬がわからなくなってきているとも言われている。国内ではハウス栽培がさかんだし、自給率が40パーセントを切ったくらいだから、スーパーには輸入食品があふれている。四季に関係なく様々な食品が並んでいるのだから、とれたての旨さを知らない日本人が増えて当然である。旬の味などわかろうはずもない。そうした反動か旬を見直そうと「地産地消」や「家庭菜園」への取り組みも盛んである。

 

 虫にも旬に似た食べごろがあるのではないか。いやむしろ季節を身近で手っ取り早く感じられる食材といえるのではないか。ということで春夏秋冬の虫の味に迫ってみたい。日本で虫をよく見かけるのはなんといっても夏から秋にかけてであろう。しかし冬から春にかけても虫の味を楽しむことができる。虫は秋に栄養を蓄えて冬はほとんどが餌をとらずにじっとしているので、夏など活動期にくらべ臭みがなく食べやすいといわれている。冬は虫の姿をほとんど見かけない季節だが、味わう方法はいくつかある。

 

1)朽ち木をくずす

2)立ち枯れた木の樹皮をはがす

3)川底の石をおこす

4)河原のイネ科のアシなどを割る

5)野生のクワの木などを切る

6)虫を発酵させる

 

1)朽ち木をくずす

 「朽ち木くずし」はもっとも胸躍る採集方法である。雑木林などで草むらに朽ちかけた倒木を見かけると、まるで宝箱のように輝いて見えてくる。なかからなにが出てくるかわからないところがびっくり箱のようでもある。なかば朽ちてしっとり湿った程度の倒木を、手くわかピッケルなどでくずしてみよう。食用になるのは越冬中のクワガタムシ幼虫、キマワリ幼虫、スズメバチ成虫、ムカデなどである。

(食べ方)

・ムカデ

 付け焼きがもっともポピュラーな調理法である。市販のウナギのたれなど絡めてフライパンで焼く。香ばしい匂いが鼻をくすぐる。いくらか苦みがあるがなれるとやみつきになる。スナックとして「ムカデポッキー」も考えられる。ムカデを炒って粗目砂糖など絡めておき、製菓用チョコを溶かしてムカデにコーティングする。ムカデの形をそのまま楽しめるおやつになる。

・クワガタムシ幼虫、キマワリ幼虫

 量が採れるわけではないので、フライパンでバター炒めが簡単かつ美味しくいただくことができる。

・スズメバチ成虫

 これは貴重である。素揚げがもっとも食べやすい。感謝していただこう。

 

2)立ち枯れた木の樹皮をはがす

 立ち枯れた樹皮を剥がすと越冬中の虫たちに出会うことができる。運がよければオオゴキブリのファミリーを採集できる。彼らはまとまって越冬している。成虫と幼虫など10頭ほど持ち帰って飼育すると容易に繁殖する。

(食べ方)

・オオゴキブリ

 前に書いたマダガスカルゴキブリに比べ、外殻が比較的やわらかいので、揚げると丸ごといただくことができる。本種は森林に暮らし材を食べているので、他の雑食性ゴキブリに比べて臭みが少ない。加えて冬季は不活発で集合フェロモンの量も少ないのではないか。

 

3)川底の石をおこす

 川底の石をおこすと越冬中の水棲昆虫が見つかる。ザザムシが代表格である。長野県南部の天竜川に越冬するカワゲラ、トビゲラの幼虫をいう。佃煮にして土産物として販売されている。冬の一時期に漁期が限定され、高値で取引されている。スローフードとして認定されるなど注目されている。

 清流に棲むヘビトンボ幼虫は薬用として名高い。孫太郎虫と呼ばれ、江戸時代から小児の疳の虫に聞くとされ、「塩半俵」といわれるほど高価だった。

(食べ方)

・水棲昆虫類

 小さいのでまとまって採れたら佃煮がたべやすい。特にカワゲラ、トビゲラ類は噛み締めるほど磯の香りに似た風味を楽しめる。ヘビトンボ幼虫はやや大きいので個別に付け焼きなどがいいだろう。

 

4)河原のイネ科のアシなどを割る

 小さな進入穴のある茎を割ると越冬しているスジツトガというガの幼虫が採れる。「ささ虫」などと称して釣り餌として売られている。

(食べ方)

・スジツトガ

 小さくてやわらかいので、さっとゆでてしょうゆを回していただく。噛むと外皮がプチンと破れ、中身はほのかに甘い。

 

5)クワの木を切る

 野生化したクワの樹皮に1.5mm程度の排フン穴があり、粉状の虫フンを発見したら、穴の下部あたりを切ってみよう。クワカミキリ幼虫に出会えたら幸運である。かつて薪炭用に薪割りなどでカミキリムシ幼虫の採集が容易だったころは、テッポウムシと称され、最も美味な虫として定評があった。クワカミキリはイチジク、ビワ、ケヤキなどにもつく。

(食べ方)

・クワカミキリ幼虫

これもとりたてをフライパンでバター焼きがいちばんうまい。越冬中なのでフン出しも必要ない。そのものの味を楽しむにはホイル焼きがオススメ。甘くとろりとした舌触りは格別である。

 

6)発酵させる

 冬季は虫を発酵させて楽しむこともできる。虫納豆、虫キムチ、虫の味噌漬けなどである。漬け込む虫は外皮がやわらかいものがいい。あまり硬いと菌がなかまで浸透しない。したがって幼虫系が適している。たとえば蜂の子、蟻の子などは漬かりやすい。いったん下茹でしてから使う。

 

参考文献

渡辺武雄(1982年):『薬用昆虫の文化誌』、東京書籍。

梅谷献二(2004年):『虫を食べる文化誌』、創森社。

 

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Bugeaterの虫食いノート(4)

2009/05/25 20:53

 

 

【さあマダゴキに挑戦だ】

 

 

 

 

 いよいよ待望(人によるかも)の試食である。焼く、煮る、ゆでる、という三種類の料理法でマダゴキに迫ってみたい。

 

 

 具体的な料理に入るまえに、昆虫一般の料理法について簡単にふれておこう。揚げれば油の旨みで虫臭さも消え、サクサクした食感でいただくことができる。特に甲虫の成虫など外殻の硬い虫は揚げると食べやすい。初めて虫を食べる人たちにオススメである。ある程度虫食に親しんだら、茹でたり蒸したりして、その虫の持つ独自の味を味わってほしい。「揚げる→焼く→煮る→茹でる→蒸す」が虫料理のセオリーである。

 

 料理法についてはまた後々ふれることになるのでこのくらいにして、お待ちかねのマダゴキ調理に入ろう。飼育ケースのなかからこれぞという個体を選び出し、数日から一週間絶食させ糞抜きしておく。イナゴなども調理前に糞抜きしたほうがいいという人もいるが、稲科植物の葉しか食べないイナゴには臭みがほとんどないので、取りたてをそのまま食べても食味にそれほど変わりがない。ゴキブリの場合は少し違う(というか大分違う気がする)。前回もふれたがゴキブリは集合性が顕著である。その集合を促す集合フェロモンは糞に含まれている。ゴキブリ特有の臭みはこの集合フェロモンが発する臭気によるものではないか。したがってできるかぎり脱糞させたほうが食べやすくなるという道理である。

 

 こうして脱糞させたマダゴキを使っていよいよ料理に入ろう。以下三種類のメニューを用意した。

 

(三種類共通の下準備)

1 3分間ほど下茹でする。

2 キッチンバサミで腹部を開く。

3 開いた腹部の白身に塩コショウをふり下味をつける。

 

 

●マダゴキのバター焼き

 

1 フライパンにバターをしいて中温で熱する。

2 マダゴキの開いた腹部にバターをぬる。

3 マダゴキをフライパンに入れて、腹部のバターが溶けるまで焼く。

4 ハシで殻から身をしごいて食べる。

*焼いても身はやわらかい。バターの香ばしさが虫の臭みを和らげてくれる。

 

 

●マダゴキの佃煮

 

1 鍋に適量の水を熱し、酒、砂糖、醤油、みりん、マダゴキを入れ、水気がなくなるまで中火で煮る。

*佃煮の方がバター焼きより長時間煮込むことと、なじみの調味料がしみこんで、いっそう食べやすくなる。

 

 

●マダゴキの赤カブ梅酢和え

 

(赤カブの漬け汁を利用する。)

1 マダゴキをゆでて、赤い漬け汁に30分〜1時間漬ける。

*酢に漬けたことで臭みはほとんど感じられない。そのかわり組織が壊れていない感じで、食感はレアに近い。多少の苦みは消化酵素の味だろうか。白い身が淡いピンクに染まって見た目も美しい。

 

 

 マダゴキの食感をたとえるならば淡白な白身魚といえようか。ゴキブリのなかでは可食部が多いという長所はあるが、殻が硬いので丸ごと食べられないという短所もある。塩焼きして干物にするとか、あるいは燻製にしてもけっこういけるのではないか。今後の展開が楽しみな食材である。

 

 

 

***

 

 

■昆虫料理研究

http://www.bekkoame.ne.jp/~s-uchi/musikui/musikui.html

 

 

■昆虫料理を楽しむ

http://musikui.exblog.jp/

 

 

NHK WORLD

http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/movie/feature45.html

 

 

SKY NEWS

http://news.sky.com/skynews/Home/video/Christmas-Grub-In-Tokyos-Insect-Restaurant/Video/200812315180526?lid=VIDEO_15180526

 

 

CCTV

http://www.youtube.com/watch?v=zA5U5Vsze2M

 

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Bugeaterの虫食いノート(3)

2009/05/18 16:00

 

【マダゴキとの優雅な生活】

 

 マダゴキってなあに? それはマダガスカルゴキブリの愛称である。しょっぱなからゴキブリかい、というのが大方の反応にちがいない。名前を聞くのも汚らわしい存在なのに、優雅な生活とはなにごとか、しかも愛称で呼ぶとは、と怪訝に思われてもしかたない。しかも昆虫食のコラムだというのに、謎は深まるばかり……。ゴキブリほど誰からも愛されない昆虫はいない(「そんなの関係ねえ!」とかれらは言うに違いないけれど)。なぜか?

 

 第一にはやはり不衛生の権化(とりわけ衛生過剰な我が国のお母さんたちにとっては)ということだろうか。彼らは病原菌の運び屋サンである。そんな悪党にサン付けはなかろうとお叱りを受けそうだ。あえて弁護をさせてもらえば、彼らはクロネコちゃんみたいに商売で運んでいるわけではない。生きるためには汚い世界にも足を踏み入れざるをえず、そこでたまたまバイキンを体にくっつけてしまうのだ。つまり根っからの悪党ではないのである。

 

 第二に外見と動きである。体は脂ぎって黒く光り、脚は毛深く、スッスッスッと素早く物かげに隠れ、しかも飛ぶではないか。もしかしたら最悪こちらの顔に体当たり攻撃をするかもしれない。ゴキブリにはそういうイメージがつきまとう。

 

 しかしである。そうした見方はあくまで人間の都合によるものではないか。ゴキブリは3億年前から地球の住人である。人類はたかだか700万年前である。したがってゴキブリは人類の大大大(と大をいくつつけても足りないような)先輩なのである。超新参者の人類が威張りまくっているのがご時世だから、被害者はゴキブリに限らないけれど、ゴキブリほど偏見によって忌み嫌われている生き物はいない。

 

 ここでマダガスカルゴキブリにさっそうと登場していただこう。マダガスカルゴキブリと総称されるのはオオゴキブリ科ハイイロゴキブリ亜科に属する一群で、その名の通りアフリカのマダガスカル島が原産である。「さっそうと登場」と書いたが、マダゴキには翅がなく、しかも動作がきわめて緩慢である。ドン臭いのである。われわれがもっているゴキブリのイメージからかけ離れている。日本ではペットの餌として売られているが、外国ではペットそのものとして飼育されてもいるという。実物を見るとそれもおおいにうなずけるのである。手に乗せると逃げるどころか逆にじっと動かなくなることが多い。アフリカ原産なだけに、人肌のぬくもりが心地良いのかもしれないと勝手に想像すると愛着がわく。これだとカブトやクワガタとなんら変わらないではないか。興奮するとシューシュー鳴くのも愛嬌である。発声法は違うがカミキリムシの鳴き声を連想させる。日本人はゴキブリというとクロゴキブリやチャバネゴキブリのイメージしか浮かばないが、国際化が叫ばれて久しいいま、もっと海外に目を転じてみると、ゴキブリの多様性(約5千種を数える)が理解されるであろう。害虫とされるゴキブリはなんと全体の1パーセントにすぎない。残るほとんどの種は森林に暮らす生態系の有用な一員である。

 

 ここまでくると、われわれがゴキブリを嫌う二つの理由がマダゴキには当てはまらないことがわかっていただけたかと思う。家屋内を徘徊しないし、無翅だし、歩きはノロノロである。そうした予備知識を頭においていただいたところで、さて本題の食べる話に移る。

 

 食用ゴキブリと称して筆者が室内で飼育しているのは、マダガスカルゴキブリ、ヨコジママダガスカルゴキブリ、アルゼンチンモリゴキブリ(デュビア)、レッドコックローチ、オオゴキブリの5種類である。ゴキブリは累代飼育が割合かんたんで、なかでもマダガスカルゴキブリは大型で可食部が多い。開腹すると白い豆腐状の身がつまっていて、その主成分は脂肪、グリコーゲン、タンパク質である。これを脂肪体といい、飢餓に強いのはこの脂肪体のおかげである。食用昆虫の飼育実験として最適な理由の一つがここにある。

 

 さらに理由の二つ目としてゴキブリの集合性が挙げられる。ゴキブリは集まって生活する昆虫であり、そのほうが成育速度がはやい。ある実験によると単独飼育での幼虫期間64日に対し、複数飼育では57日前後と短い。たとえばコオロギなどは狭いところで飼育すると雄通しがなわばり争いをする。ゴキブリは狭いところで効率的に飼えるのである。

 

 もう一つの理由として、マダゴキは卵胎生であるということが挙げられる。つまりお母さんのお腹の中で孵化して赤ちゃんとして生まれてくる。だから生存確率が非常に高い。

 

 さらに雑食性というのもポイントである。昆虫は偏食が多く食草・食樹の入手に苦労することがよくある。残り物が餌になる利点は大きい。

 

 こうしてみてくると、ゴキブリは食糧資源としての諸条件にきわめて恵まれている。筆者などには新鮮な食材が身近にあるという安心感のようなものがある。これは本能的な快感につながる「優雅な生活」といえないだろうか。

 

 さあ残るは実践あるのみである。偏見を拭い、マダゴキ料理がならんだテーブルにご着席願いたい。

 

参考文献

石井象二郎(1976年):『ゴキブリの話』、北隆館。

鈴木知之(2005年):『ゴキブリだもん』、幻冬舎。

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■昆虫料理研究

http://www.bekkoame.ne.jp/~s-uchi/musikui/musikui.html

 

■昆虫料理を楽しむ

http://musikui.exblog.jp/

 

NHK World Dream Food?

http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/movie/feature45.html

 

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